ベトナム料理を語るとき、欠かせないのが「巻く」という食べ方です。食材を包み、タレにつけて味わう。その一連の動作は、単なる調理法ではなく、ベトナムの暮らしや土地の気候と深く結びついています。
北部で親しまれてきた揚げ春巻き(ネムラン)は、しっかりとした味付けと香ばしさが特徴です。豚肉や春雨、野菜を皮で包み、油で揚げることで、寒い季節でも体が温まる料理として家庭の食卓に根づいてきました。熱々を甘酸っぱいタレにつけて食べるのが定番です。

中部から南部にかけては、より軽やかな巻き料理が多く見られます。生春巻き(ゴイクオン)は、ライスペーパーでエビや肉、麺、ハーブを包み、火を使わずに素材の味を楽しむ料理です。暑い気候の中で、さっぱりと食べられる工夫が生まれました。

また、焼いた肉や魚を葉野菜で包み、香りの強いハーブと一緒に味わう料理や、蒸した米粉の皮で具材を巻くバインクオンなど、包む素材も地域によってさまざまです。ライスペーパーに限らず、その土地で手に入るものを生かす柔軟さが、ベトナムの巻き料理を豊かにしています。

どの巻き料理にも共通するのが、つけダレの存在です。甘味、酸味、コクのバランスが料理全体をまとめ、ひと口ごとに味の変化を楽しませてくれます。
巻く、味わう、つけダレで仕上げる。
そのシンプルな流れの中に、北から南へと続くベトナムの食文化が息づいています。



















