ベトナム料理とは、ひとことで言えば「最後のひと口の味を、食べる人が自分で決める料理」です。フォーにバインミーと、名前だけなら日本でもよく知られています。ただし、その先にどんな広がりがあるのかは、あまり語られてきませんでした。この記事では、味の組み立て方から主食の種類、おやつや果物、そして食卓と街の風景までをひととおり整理します。
ベトナム料理とは、食べる人が最後に仕上げる料理
油をあまり使わず、たれ・ハーブ・生野菜という三つの要素で味を決める。これが全体を貫く考え方です。厨房で味を完成させきらず、最後のひと押しを食べる人の手に残しておきます。つまり、同じ一皿でも、座る人によって仕上がりが変わります。
土台になるのは、魚を塩で発酵させた調味料です。塩味とうま味を同時に受け持ち、日本のしょうゆに近い位置にあります。そこに砂糖やライムを合わせたつけだれが、料理ごとに濃さを変えて添えられます。たしかに辛い料理もありますが、主役は辛さよりも香りと酸味です。ちなみに甘さと酸味の好みは、地域ごとの味覚マップとしてはっきり分かれます。
主食は麺だけではない、という前提
まず知っておきたいのは、主食の幅が広いことです。フォーの基本は平たい米麺ですが、現地の朝に同じくらい食べられているのは丸い米麺で、ブンの選び方を知ると品書きがぐっと読みやすくなります。さらに南部には、澄んだスープでいただくクイティウもあります。
一方、ごはん物の層も厚い。山あいには竹筒で炊くコムラムがあり、街にはバインミーの成り立ちが示すとおり、フランス由来のパン文化も根づきました。つまり主食は、麺・ごはん・もち米・粉ものの四本立てです。
ベトナム料理とは、地域ごとの集まりでもある
南北に細長い国なので、気候も獲れるものも土地ごとに変わります。北はだしと塩気を効かせた落ち着いた味、中部は辛く濃く、南は砂糖とハーブで華やかになります。この違いは一段落では収まらないため、詳しくは北部・中部・南部の違いにゆずります。また、水郷のメコンデルタの食卓のように、同じ南部でも表情が変わります。地域名や料理名をひととおり見渡したい方は、日本語版ウィキペディアの概説も参考になります。
葉で包み、竹で炊き、刃で飾る
道具の少なさを、手わざが補ってきました。たとえばバナナの葉で包む調理は、包装であると同時に香りづけでもあります。さらに野菜の飾り切りは、家庭の祝いの席から店先の一皿まで受け継がれてきた技です。このように、器や包みまで含めて一皿と考える発想が根づいています。
保存の知恵も同じ流れにあります。日差しで干す、塩で漬ける、発酵させる。冷蔵庫に頼らない工夫が、そのまま香りとうま味の層になりました。そのため、素材をむだにしない考え方が味の輪郭をつくっています。
食事と食事のあいだにある、おやつと果物
一日は三度の食事だけで区切られていません。エビせんべいやおこげのおやつのように、軽くつまむものが常にそばにあります。加えて色とりどりの伝統菓子は、祝いの日にも日常にも顔を出します。
果物も欠かせません。南国のフルーツは種類が多く、塩と唐辛子をつけて食べる習慣もあります。甘さに塩気と辛さを足していく。実はこの足し算は、たれで味を決める考え方とまったく同じです。
ベトナム料理とは切り離せない、食卓と街の風景
家庭では、ごはんと汁物、炒め物、副菜を一度に並べます。丸いお盆に並べる食卓は日本の定食と似ていますが、順番ではなく同時に食べる点が違います。
一方、街に出れば低いプラスチック椅子の屋台が主役になります。朝は麺、昼はごはん、夕方はつまみと、時間帯で顔が変わります。街に流れる売り声が時刻を知らせ、暑い盛りにはハンモックでの昼休みが入ります。そのため食事は、一日のリズムの一部として組み込まれています。
はじめの一皿は、どこから入るか
まずは香りのやさしい汁麺から入ると失敗しにくいです。次に、パンやごはん物で食感の違いを試します。最後に、ハーブや生野菜を少しずつ足して自分の濃さを探します。もちろん辛さも後から足す前提なので、最初は控えめで構いません。二人以上なら、汁物とパン、そして巻きものを一皿ずつ頼むと食感が重なりません。
量が読めないときは、汁麺を一杯と小皿をひとつから始めると安心です。また、ハーブが別皿で届いたら、半分だけ入れて味の変わり方を確かめてみてください。こうして少しずつ足していくと、自分がどの香りを好むのかがはっきりしてきます。
ベト屋で確かめられること
ベト屋のスープは、骨と香辛料を14時間以上かけて炊いたものです。化学調味料不使用で、うま味は素材から引き出しています。はじめは定番牛肉フォー、あっさりしたものなら鶏肉フォー。パンを選ぶなら豚肉BBQバインミー、和えものを選ぶなら揚げ春巻きブンがわかりやすい一皿です。なお、販売しているメニューや価格は店舗により異なる場合がございます。東京と千葉のお店は店舗一覧のページからご確認ください。
ベトナム料理とは、正解がひとつではない料理
ここまで見てきたとおり、たれ・ハーブ・生野菜という三つの要素は、麺にもごはんにもパンにも同じように効いています。地域や店で表情は変わりますが、最後のひと押しを食べる人に残す点は共通です。つまり、自分の濃さを探すところまでが食事の一部だということ。はじめの一杯で好みがつかめなくても、二杯目では必ず近づきます。
よくある質問
ベトナム料理とは辛い料理のことですか?
いいえ。中部には辛い料理が多いものの、全体としては香りと酸味が中心です。唐辛子はたれや小皿で後から足す形が一般的なので、辛さは自分で決められます。
パクチーが苦手でも食べられますか?
食べられます。実は、パクチーを使わない料理のほうが多数です。ハーブは別皿で出てくることが多く、入れる量も自分で決められます。
野菜フォーには肉が入っていないのですか?
具材に肉は使っていません。ただしスープは骨を14時間以上炊いたものを使っているため、お肉を控えたい日の一杯、という位置づけになります。
日本の外食と、いちばん違うのはどこですか?
卓上で自分が味を足す前提かどうかです。具体的には、ハーブやライムを後から加えて濃さを整えるところが大きな差になります。もちろん、どちらが良いという話ではありません。



















